Mission QX-2 MKIIで味わう濃密で艶やかな音世界

目次

概要

DALI KUPID、SONY SS-CS5M2と並べて聴き比べると、Mission QX-2 MKIIの輪郭の太さと音像の密度は、最初の一音で空気の変化を感じさせるタイプだと分かる。華やかに広がる空間描写を得意とするKUPID、明快に前へ押し出す中高域でリズムの粒立ちを立てるSS-CS5M2に対して、QX-2 MKIIは音が「面」から「体」へと厚みを増し、ボーカルの質感や低域の沈み込みを自然な重心で支えるバランスが印象的。耳にまとわりつかない滑らかな高域と、弾力のある低域の収束の速さが同居し、繊細さと力感の両立を狙った音作りに手のあとが見える。小振りな音量でも骨格が崩れず、楽曲の奥行きやステージの前後関係が保たれるため、夜間のリスニングでも表情が痩せないのは好材料。設置に関しては、壁との距離やスピーカースタンドの剛性が音の締まりに直結し、わずかな角度調整でボーカルのフォーカスがカチッと合う手応えがある。ジャンル適性は広く、アコースティックでは胴鳴りの質感、クラシックでは弦の艶、ジャズではブラシの柔らかさに説得力を持たせ、電子音源でも低域の輪郭が曖昧にならない。違いが見えたポイントを踏まえつつ、各機の個性と得手不得手を実際の配置と音量レンジで検証し、部屋の条件や聴きたい音世界に合わせた選択肢を明確にしていく。

比較表

機種名(固定文言) Mission QX-2 MKII DALI KUPID SONY SS-CS5M2
画像
方式 2WAY 2WAY 3WAY
ユニット数 2 2 3
ウーファー口径 165mm 130mm 130mm
ツイーター口径 38mm 25mm 25mm
スーパーツイーター 非搭載 非搭載 19mm搭載
再生周波数下限 44Hz 53Hz 53Hz
再生周波数上限 24kHz 26kHz 50kHz
インピーダンス
感度 88dB 86dB 87dB
ウーファー素材・タイプ ロングファイバーコーン 記載なし コーン型
ツイータータイプ リングドーム 記載なし ソフトドーム
エンクロージャー形式 バスレフ 記載なし バスレフ
外形寸法(幅×高さ×奥行) 220×320×310mm 記載なし 178×335×220mm
質量 8.5kg(1本) 記載なし 約4.3kg(1本)
最大入力 記載なし 記載なし 100W

比較詳細

Mission QX-2 MKIIを実際に聴いてみると、まず最初に感じるのは音の広がり方の自然さであり、空間全体に音が溶け込むような印象を受ける。中域の厚みがしっかりとあり、ボーカルが前に出てくるのに決して押し付けがましくなく、柔らかい質感で耳に届く。これに対してDALI KUPIDは繊細さを強調する方向性があり、細やかなニュアンスを拾い上げる能力に優れているが、時に線が細く感じられる場面もある。SONY SS-CS5M2は全体的に明るく軽快な音色で、ポップスやロックを聴くと元気よく鳴るが、低域の沈み込みや奥行き感ではMissionの方が一歩抜きん出ていると体感した。

QX-2 MKIIの低音は量感だけでなく質感が豊かで、ベースラインが床を伝って響くようなリアリティを持つ。DALI KUPIDでは低域がタイトにまとまり、輪郭がはっきりしているためジャズやクラシックの弦楽器には適しているが、ロックやエレクトロの迫力を求めるとやや物足りなさを覚える。SONY SS-CS5M2は低域が軽快でスピード感はあるものの、深みや厚みではQX-2 MKIIに及ばず、長時間聴いていると少し平面的に感じることがあった。実際に同じ楽曲を切り替えて聴くと、Missionの方が音場の奥行きが広がり、演奏者が前後に並んでいる様子が浮かび上がるように感じられる。

高域の表現力に関しても差が明確で、QX-2 MKIIは煌びやかさを持ちながら耳に刺さらない柔らかさがあり、シンバルやストリングスの余韻が自然に消えていく。DALI KUPIDは繊細で透明感が強く、細部の描写力は際立っているが、時に冷たさを感じることもある。SONY SS-CS5M2は明るく元気な高域で、ライブ感を楽しむには十分だが、繊細な表現を求めると粗さが目立つ場面がある。Missionの高域は長時間聴いても疲れにくく、音楽に没入できる点が大きな魅力だと感じた。

音場の広がり方も比較すると面白く、QX-2 MKIIは横方向だけでなく縦方向にも立体感を感じさせ、まるでステージの前列に座っているような臨場感を得られる。DALI KUPIDは左右の広がりは見事で、楽器の位置関係が明瞭に分かるが、奥行きの表現は控えめで平面的に感じることがある。SONY SS-CS5M2は音が前に飛び出すような勢いがあり、ライブハウス的な楽しさはあるが、空間の奥行きや立体感ではMissionに軍配が上がる。実際にクラシックの大編成を聴いた際、QX-2 MKIIはホールの響きまで再現しているように感じられ、音楽のスケール感が一段と大きく伝わってきた。

質感の違いはジャンルごとに顕著で、アコースティックギターやピアノの音色ではMissionが温かみを持ち、弦の振動や鍵盤のタッチが生々しく伝わる。DALI KUPIDは細部の描写力が高く、録音の良さをそのまま引き出すため、スタジオ録音の精密さを楽しむには最適だと感じた。SONY SS-CS5M2は勢いのあるサウンドで、ロックやポップスを聴くとノリ良く楽しめるが、繊細な楽曲ではやや粗さが目立ち、音楽の奥深さを求めると物足りなさを覚える。Missionはジャンルを問わずバランス良く鳴らし、特にボーカルの存在感が自然に浮かび上がる点が魅力的だ。

長時間のリスニングにおいても違いがあり、QX-2 MKIIは耳に優しい音作りで、音楽を聴き続けても疲労感が少なく、自然に音楽に没頭できる。DALI KUPIDは繊細さゆえに集中して聴くと神経を使う場面があり、聴き手に緊張感を与えることもある。SONY SS-CS5M2は明るく元気な音で短時間の試聴では楽しいが、長時間では音の粗さが気になりやすい。Missionはリラックスして音楽を楽しめる点で、日常的に音楽を聴く環境に非常に適していると感じた。

総合的に体験すると、Mission QX-2 MKIIは音楽のジャンルを問わず安定した表現力を持ち、低域の厚み、中域の温かさ、高域の柔らかさがバランス良く調和している。DALI KUPIDは繊細さと透明感を武器にしており、録音の良さを引き出す用途に向いているが、迫力やスケール感ではMissionに劣る。SONY SS-CS5M2は明るく元気な音でライブ感を楽しめるが、奥行きや繊細さを求めると限界がある。実際に聴き比べると、Missionの音楽的な包容力が際立ち、日常的に音楽を楽しむ上で最も安心して選べる存在だと強く感じた。

まとめ

今回の3機種をじっくり聴き比べて、最も「音楽の体温」を乗せてくれたのはMission QX-2 MKII。量感のある低域がだぶつかずに締まり、ボーカルの芯がほどよく前に出るので、アコースティックからエレクトロまで曲調を問わず没入できた。小規模な部屋での近接セッティングでも音場が窮屈にならず、定位の結びが強いのが好印象。箱鳴りの質感も自然で、夜の小音量でも情報が痩せない。「聴き疲れしないのに物足りない感じがない」というバランスが、日常のリスニングにいちばん寄り添うと感じた。次点はDALI KUPID。明るく軽快なキャラクターで、アタックの立ち上がりが俊敏。色彩感ある中高域が曲の輪郭を軽やかに描き、リズムのノリを素直に伝える。ただし低域のボトムはコンパクト相応で、置き方や座り位置に対して音場の変化が素直に出るぶん、少しだけセッティングの丁寧さを求める。最後にSONY SS-CS5M2。情報量がきれいに並ぶ3ウェイらしい見晴らしの良さがあり、テレビ横やデスクサイドでも扱いやすい素直な音作り。小音量でも明瞭さが保たれるのは長所だが、音の芯の厚みや余韻の湿度は上位2機種に一歩譲る場面があった。総評として、濃淡の描写力と長時間聴いても気持ちがほどける自然さでQX-2 MKIIがベストチョイス。軽快でカラフルな音の躍動感を求めるならKUPID、整った明瞭感と設置の懐の広さを重視するならSS-CS5M2をおすすめしたい。

引用

https://www.mission.co.uk/qx-2-mk-ii/

https://www.dali-speakers.com/products/kupid/kupid/

https://www.sony.jp/audio/products/SS-CS5M2/


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