目次
比較概要
YH-5000SE、YH-C3000、そして今回取り上げるYH-4000(B)は、ヤマハが展開するハイエンドヘッドホンの中でも特に注目度の高い3モデルです。いずれも「TRUE SOUND」を掲げたシリーズに属し、音の再現性や装着感へのこだわりは共通しつつも、目指している体験やキャラクターは大きく異なります。YH-5000SEはフラッグシップとして平面磁界型「オルソダイナミック™ドライバー」を搭載し、5Hz〜70kHzという広帯域再生と98dB/mWの高感度を武器に、音場表現と情報量の多さで頭ひとつ抜けた存在です。
一方でYH-C3000は、ヤマハ独自の「アルモダイナミック™ドライバー」とビーチ材の木製ハウジングを組み合わせた密閉型モデル。5Hz〜55kHzの広い帯域とシルクプロテインレザー製イヤーパッドによって、密閉型らしい濃密さと楽器的な余韻を両立させています。外部ノイズを抑えつつ、ライブ会場の熱気や音の厚みをしっかり感じたいリスナーに向いたチューニングで、「楽器メーカーらしい密閉」の方向性がはっきり打ち出されています。
そしてYH-4000(B)は、YH-5000SEと同系統のオルソダイナミック™ドライバーを採用しつつ、より多くのリスナーが手に取りやすい価格帯と使い勝手を意識した「第2の開放型フラッグシップ」といった立ち位置のモデルです。ドライバー構成や5Hz〜70kHz・34Ω・約320gといった基本スペックは5000SEに近い一方で、ハウジング内の圧力を調整するフィルターには新開発のPETメッシュフィルターを採用。これにより、中低域の密度感を高めつつ開放型らしい空気感も維持するという、やや熱量寄りの音作りがなされています。
イヤーパッドもYH-4000専用設計で、耳に触れる正面部は人工スエード、外周部は人工レザーのハイブリッド構造。スエードのウォーム感とレザーの解像感を両立させることで、音の立ち上がりから余韻まで自然に繋がるようなチューニングになっているのが印象的でした。実際の使用感としても、YH-5000SEほどストイックではなく、音楽を「聴き込む」時間とBGM的に「流す」時間の両方に対応できる器の広さがあります。
こうした背景を踏まえると、YH-5000SEは徹底的な分析的リスニング、YH-C3000は密閉型ならではの没入感と熱量、YH-4000(B)はその中間で「日常の延長線上にあるハイエンド」というポジションに収まるモデルと言えます。次のセクションでは、スペックと構造の違いを比較表で整理したうえで、実際のリスニング体験にどのような差となって表れるのかを詳しく見ていきます。
比較表
| 機種名 | ヤマハ YH-4000(B) | ヤマハ YH-5000SE | ヤマハ YH-C3000 |
|---|---|---|---|
| 画像 | |||
| タイプ | オーバーイヤー/開放型 | オーバーイヤー/開放型 | オーバーイヤー/密閉型 |
| ドライバー方式 | 平面磁界型(オルソダイナミック™ドライバー) | 平面磁界型(オルソダイナミック™ドライバー) | ダイナミック型(アルモダイナミック™ドライバー) |
| 振動板素材 | 超軽量・薄膜振動板 | 超軽量・薄膜振動板 | ザイロン™+紙+樹脂の3層構造振動板 |
| フィルター | PETメッシュフィルター | 圧延平畳織ステンレスフィルター | Y字補強メッシュダンパー+通気ポート |
| ハウジング素材 | マグネシウム | マグネシウム | 木製(ビーチ材/ブナ材) |
| イヤーパッド素材 | 人工スエード+人工レザー | レザー/スエード(着脱式イヤーパッド2種) | シルクプロテインレザー+低反発クッション |
| ヘッドバンド構造 | 2層構造ヘッドバンド+無段階スライダー | 2層構造ヘッドバンド+無段階スライダー | 2層構造ヘッドバンド+無段階スライダー |
| 重量 | 約320g(ケーブル除く) | 約320g(ケーブル除く) | 約330g(ケーブル除く) |
| 再生周波数帯域 | 5Hz〜70kHz | 5Hz〜70kHz | 5Hz〜55kHz |
| 感度 | 97dB/mW(1kHz) | 98dB/mW(1kHz) | 94dB/mW(1kHz) |
| インピーダンス | 34Ω | 34Ω | 34Ω |
| ケーブル仕様 | 約2m/着脱式Y型ケーブル(3.5mmステレオ、6.3mm変換付属) | 約2m/着脱式Y型ケーブル(3.5mmステレオ/4.4mmバランス、6.3mm変換付属) | 約2m/着脱式Y型ケーブル(3.5mmステレオ、6.3mm変換付属) |
| 接続端子 | 3.5mmステレオミニ(6.3mm標準変換プラグ付属) | 3.5mmステレオミニ/4.4mmバランス(6.3mm標準変換プラグ付属) | 3.5mmステレオミニ(6.3mm標準変換プラグ付属) |
| 生産拠点 | ヤマハ掛川工場(日本製) | ヤマハ掛川工場(日本製) | ヤマハ掛川工場(日本製) |
| 付属品 | アンバランスケーブル、変換プラグ、専用キャリーケース、クリーニングクロス ほか | アンバランス/バランスケーブル、変換プラグ、イヤーパッド2種、スタンド、キャリーケース ほか | アンバランスケーブル、変換プラグ、専用キャリーケース、クリーニングクロス ほか |
| 用途 | 音楽鑑賞・映画・ゲーム没入リスニング | スタジオ的な集中リスニング・高品位音楽鑑賞 | 環境ノイズを抑えた没入リスニング・夜間リスニング |
| 発売年 | 2025年 | 2022年 | 2025年 |
| カラー | ブラック(B) | ブラック(B) | ブラック(B) |
| ブランド特徴 | TRUE SOUND追求/第2のオルソダイナミック開放型 | TRUE SOUND追求/フラッグシップ開放型 | TRUE SOUND追求/木製密閉ハイエンド |
比較詳細
ヤマハYH-4000(B)を実際に使ってみると、まず感じるのは音の輪郭が非常に自然で、長時間聴いていても耳に疲れが残りにくいという点です。解像度は高いものの過度に鋭さを強調することはなく、柔らかさと透明感が同居している印象を受けました。50mmのオルソダイナミック™ドライバーと新開発のPETメッシュフィルターの組み合わせにより、中低域にはしっかりとした密度感がありつつも、開放型らしい抜けの良さがきちんと残っています。
これに対してYH-5000SEは、同じく平面磁界型ドライバーを搭載しながら、さらに細部の描写力が際立ちます。楽器の位置関係や空気感まで鮮明に浮かび上がるような体験が得られ、まるでスタジオの中に座っているかのような臨場感がありました。圧延平畳織ステンレスフィルターによる音場制御のためか、音が立ち上がる瞬間の密度と広がりが非常に高いレベルで両立されており、音場の端から端までを目と耳でなぞるような感覚があります。その分、音の情報量が非常に多く、リラックスして流し聴きするというよりは「作品と向き合う」聴き方をしたくなるモデルです。
一方でYH-C3000は、アルモダイナミック™ドライバーとビーチ材ハウジングを組み合わせた密閉型らしく、よりカジュアルかつエネルギッシュな印象を受けました。ザイロン™を含む3層構造の振動板と木製ハウジングの効果もあり、低音の厚みが心地よく響きます。ベースラインがしっかりと支えてくれるので、ポップスやロックを聴く際には身体が自然にリズムに乗ってしまうような楽しさがあります。高域の伸びはYH-4000(B)ほど繊細ではないものの、全体としてまとまりがあり、気軽に音楽を楽しむには十分なバランスを備えています。実際に使ってみると、外部ノイズをある程度遮りながら、夜間や周囲に人がいる環境でも遠慮なく音量を上げられる安心感がありました。
スペック面を眺めると、YH-5000SEとYH-4000(B)はいずれも再生周波数帯域5Hz〜70kHz、インピーダンス34Ω、質量約320gという、かなり近い土台を共有しています。対してYH-C3000は5Hz〜55kHz、同じく34Ωで約330gと、やや低域〜中高域にフォーカスした密閉型らしい設計です。しかし実際に聴き比べると、数字以上にハウジング構造とフィルター設計の違いが性格を分けており、YH-4000(B)は「開放型の心地よさ」と「中低域の濃さ」のバランスに振った調整であることがよく分かります。
YH-4000(B)の魅力は、その中庸さと「熱量の乗せ方」にあります。YH-5000SEほどの緻密さとストイックさはないものの、音楽の輪郭をしっかりと描きつつも聴き疲れしない柔らかさを持ち合わせています。クラシックやジャズを聴くと、楽器の響きが自然に広がり、ホールの空気感を穏やかに再現してくれるため、落ち着いた時間を過ごすのに最適でした。逆にYH-C3000はよりエネルギッシュで、ライブ感を強調するような鳴り方をするため、気分を盛り上げたいときに選びたくなるモデルです。
装着感についてもそれぞれカラーがはっきりしています。YH-4000(B)は人工スエードと人工レザーを組み合わせたイヤーパッドが耳をふんわり包み込み、側圧も適度で長時間の使用でも快適さが続きます。2層構造のヘッドバンドと無段階スライダーの組み合わせにより、頭の形に合わせて微調整しやすく、「気付いたら数時間経っていた」ということも珍しくありませんでした。YH-5000SEはよりしっかりとしたホールド感があり、頭を動かしても安定しているため、集中して音楽に没入するのに向いています。
YH-C3000は約330gと数値上はほぼ同等ながら、木製ハウジングと密閉型構造のため、装着した瞬間の「守られている」感覚が強く、外界から切り離されるような没入感があります。シルクプロテインレザーと低反発クッションを組み合わせたイヤーパッドは、耳周りの密着感が高く、密閉型にありがちな圧迫感を和らげつつ、しっかりと低域の量感を支えてくれます。実際に外で使ってみると、電車内やカフェなどでも音に集中しやすく、日常の中に自分だけの「リスニングルーム」を持ち込んでいるような感覚がありました。
音のキャラクターを改めて整理すると、YH-5000SEは分析的で細部を掘り下げるような聴き方を促し、YH-4000(B)は音楽全体を心地よく包み込むようなバランスを提供し、YH-C3000は勢いと楽しさを前面に押し出すスタイルです。同じ楽曲を聴き比べると、例えば弦楽器の響きはYH-5000SEでは一本一本の弦の震えまで感じられるような緻密さがあり、YH-4000(B)では柔らかく広がる響きが心地よく、YH-C3000ではリズムに合わせて全体が力強く鳴り響く印象でした。
また、静かな環境でじっくり聴くときにはYH-4000(B)の自然な音の広がりが心地よく、夜にリラックスしながら音楽を楽しむのにぴったりでした。逆に集中して音の細部を分析したいときにはYH-5000SEが圧倒的に有利で、録音の質や楽器の配置を確認するような用途に向いています。YH-C3000は外出時や気分転換にぴったりで、音楽を楽しむことそのものにフォーカスしたモデルだと感じました。
総じて、YH-4000(B)は「聴きやすさ」と「音の豊かさ」を両立させたモデルであり、日常的に音楽を楽しむ人にとって非常に魅力的です。YH-5000SEは音楽を徹底的に掘り下げたい人に、YH-C3000は気軽に音楽を楽しみたい人にそれぞれ適しています。実際に使い比べてみると、用途や気分によって選び分けたくなるほどキャラクターが異なり、どのモデルもそれぞれの魅力を持っています。YH-4000(B)はその中間に位置し、バランスの良さから「これ一台で十分」と思わせる安心感がありました。
こうした体験を通じて、YH-4000(B)は単なるスペックの比較では語り尽くせない魅力を持っていると実感しました。音楽を心地よく包み込み、日常の中で自然に寄り添う存在として、手に取る価値のあるモデルだと強く感じています。
まとめ
まずはYH-5000SE。ひと音の立ち上がりから消え際まで、空気の揺れが見えるような解像に息をのみました。広がりは自然で、センター像が滲まず立体的。低域は過不足なく輪郭が締まり、ピアノの打鍵やベースの胴鳴りが生々しい。長時間でも音量を上げたくなる余裕があり、録音の癖も暴きつつ音楽の熱を損なわないところが圧巻でした。
続いてYH-4000(B)。5000の緊張感を少しほどき、耳元に近づく距離感で熱量を前に押し出してくる。中域の厚みが魅力で、ボーカルの吐息やギターの胴の温度がぐっと近い。PETメッシュフィルターの抜けが効いているのか、開放型らしい空気感は保ちながら低域の密度が増して、ライブ盤で肩が自然と揺れる。過度に明るくも暗くもならず、私の普段使いでは「音楽を聴く」行為に集中できる調整だと感じました。
最後にYH-C3000。密閉らしい黒背景で静けさが深く、スネアのエッジや電子音の輪郭がくっきり出る。木製ハウジング由来の余韻も手伝って、ピアノやストリングスの残響がほんのり温かく伸びていくのが印象的でした。遮音が効く環境では頼もしく、定位の安定も高い。ただ私の好みでは、開放二機の空気の呼吸感に一歩譲る印象で、長時間の没入は曲選びを少し選ぶシーンもありました。
総じて、作品の質感を深掘りしたいならYH-5000SE、日常の熱量を一番自然に乗せたいならYH-4000(B)、環境ノイズを気にせずキレを楽しむならYH-C3000。ベストチョイスはYH-4000(B)。音楽の体温を保ったまま、開放の心地よさと密度感をうまく両立し、私の生活圏で最も出番が多かった一本でした。
引用
https://jp.yamaha.com/products/audio_visual/headphones/yh-5000se/index.html
https://jp.yamaha.com/products/audio_visual/headphones/yh-4000/index.html
https://jp.yamaha.com/products/audio_visual/headphones/yh-c3000/index.html
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