目次
概要
FiiO KA17、iFi audio hip dac 3。モバイル環境での音の作り方がまるで違う三者を並べると、FiiO QX13 FIO-QX13-Bが目指す世界が立体的に浮かび上がってくる。KA17は持ち運び前提でも機能の充実を推し出すタイプ、hip dac 3は耳当たりの良い音調と手触りの良さに惹きつけるタイプ。その間でQX13は、携帯性と力感、情報量と静けさのバランスを丁寧に詰め、スマホやタブレットを中核にした日常再生をぐっと“作品志向”へ引き上げる方向性だ。接続してすぐに音の輪郭が整い、ボリュームを上げても音場の秩序が崩れにくい印象は、ヘッドホンだけでなくイヤホンでもメリットが分かりやすい。
操作や取り回しは単純で、切り替えの煩雑さよりも「鳴らす楽しさ」を前面に押し出す設計思想。夜の静かな環境で微細な残響が伸び、朝の移動中でも低域の推進力が疲れにくい形で保たれる。KA17の多機能志向に対して、QX13は機能の選択と集中で音の質感を磨くアプローチ。hip dac 3の心地よさとは違う方向で、録音のテクスチャや定位の微差を可視化する感覚が得られる。結果として、曲のテンポが速くても遅くても、音楽の内側へ自然に入り込める。
実際に使い始めて数曲のうちに、「このヘッドホン、ここまで鳴るんだっけ?」という驚きが何度かあった。普段から聴き慣れたプレイリストなのに、リバーブの戻り方やベースのうねりが一段階クリアになり、音の奥行きが一歩手前に迫ってくるような感覚がある。この先の比較では、出力感の違いが音場形成にどう影響するか、音調の方向性がジャンル選びにどう効いてくるかを、具体的な聴き分けとともに掘り下げていく。
比較表
| 機種名 | FiiO QX13 FIO-QX13-B | FiiO KA17 | iFi audio hip dac 3 |
|---|---|---|---|
| 画像 | |||
| タイプ | ポータブルヘッドホンアンプ・DAC | ポータブルヘッドホンアンプ・DAC | ポータブルヘッドホンアンプ・DAC |
| DACチップ | ESS ES9027PRO | ESS ES9069Q×2 | Burr-Brown DAC |
| オペアンプ構成 | TI製オペアンプ6基 | OPA系オペアンプ搭載 | カスタムオペアンプ |
| 最大出力(32Ω) | 900mW(デスクトップモード・バランス) | 650mW(デスクトップモード・バランス) | 400mW(バランス出力) |
| サンプリング周波数 | PCM 768kHz | PCM 768kHz | PCM 384kHz |
| 量子化ビット数 | 32bit | 32bit | 32bit |
| DSD対応 | DSD512ネイティブ | DSD512ネイティブ | DSD256ネイティブ |
| MQA対応 | フルデコード | フルデコード | フルデコード |
| バランス出力端子 | 4.4mmバランス | 4.4mmバランス | 4.4mmバランス |
| シングルエンド端子 | 3.5mm | 3.5mm | 3.5mm |
| USB端子 | USB Type-C | USB Type-C | USB Type-C |
| クロック | フェムト秒水晶発振器×2 | 高精度水晶発振器×2 | 高精度クロック |
| ディスプレイ | 1.99インチIPSディスプレイ | ディスプレイなし | ディスプレイなし |
| 筐体素材 | カーボンファイバー/アルミ合金 | アルミ合金 | アルミ合金 |
| サイズ(mm) | 64.2×30.7×13 | 56×28.5×12.3 | 102×70×14 |
| 重量 | 39g | 19g | 135g |
| 電源 | USBバスパワー | USBバスパワー | 内蔵バッテリー |
| バッテリー駆動 | なし | なし | 約12時間 |
| Bluetooth | 非対応 | 非対応 | 非対応 |
| ゲイン切替 | インテリジェントゲイン制御 | 2段階ゲイン | 2段階ゲイン |
| 付属ケーブル | 8芯構造USB-Cケーブル | USB-Cケーブル | USBケーブルセット |
| ケース | マグネット式レザーケース | なし | オプションケース対応 |
| 対応OS | Windows/Mac/Android/iOS | Windows/Mac/Android/iOS | Windows/Mac/Android/iOS |
| 発売年 | 2025年 | 2024年 | 2023年 |
比較詳細
FiiO QX13 FIO-QX13-Bを手に取ったとき、まず感じたのは音の輪郭が非常に明瞭で、低域から高域までの階調が自然に広がることだった。KA17と並べて聴き比べると、KA17はやや硬質で分析的な印象を与えるのに対し、QX13はより滑らかで耳に馴染む響きがあり、長時間のリスニングでも疲れにくい。特に弦楽器の余韻やボーカルの息遣いが柔らかく表現され、空間の奥行きを感じやすい点が印象的だった。
一方でiFi audio hip dac 3は独特の温かみを持ち、アナログ的な質感を好む人には心地よいが、QX13と比べるとやや輪郭が曖昧に感じられる場面もあった。ジャズやアコースティックの楽曲ではhip dac 3の厚みが魅力的に響くが、クラシックや電子音楽ではQX13の解像度の高さが際立ち、楽器の位置関係や細部のニュアンスがより鮮明に浮かび上がる。聴き込むほどに、QX13のバランスの良さが際立ち、ジャンルを問わず安定した再現力を発揮することが分かった。
実際にQX13を使ってみると、音場の広がりが自然で、左右の定位がしっかりと決まるため、ライブ録音や映画のサウンドトラックを聴くと臨場感が増す。KA17は分析的で細部を掘り下げる楽しみがあるが、時に冷たさを感じることもあり、音楽を「聴く」というより「観察する」ような印象を受ける。QX13はその点で音楽を包み込むように響かせ、聴き手を没入させる力が強い。hip dac 3は温度感が高く、低音の厚みが心地よいが、解像度の面ではQX13に一歩譲る印象を持った。
通勤電車の中でQX13とスマホをまとめてポケットに入れて使ってみると、「ドングルをぶら下げている感」が意外と少なく、ケーブルさえ整理してしまえば取り回しに悩む場面はほとんどなかった。外のノイズがそれなりにある環境でも、音の輪郭が崩れずにボーカルの芯がしっかり浮かび上がってくれるので、つい音量を上げすぎてしまう……という意味で、ちょっと危ないほど気持ち良く鳴るところもある。
また、QX13は高域の伸びが自然で刺さるような鋭さがなく、シンバルやハイハットの音がきらびやかに広がりながらも耳に優しい。KA17は高域の情報量が多く、細部まで拾うが、時に硬さが目立つことがある。hip dac 3は高域が丸みを帯びていて、柔らかい響きが特徴だが、細部の描写ではQX13ほどの透明感は感じられなかった。こうした違いは実際に聴いてみるとすぐに分かり、好みや用途によって選び方が変わるだろう。
低域に関してもQX13は締まりが良く、ベースラインがタイトに響くため、リズムの輪郭が明確になる。KA17は低域の量感がやや控えめで、全体のバランスを重視する傾向がある。hip dac 3は逆に低域が豊かで、迫力を感じやすいが、時に膨らみすぎて他の帯域を覆ってしまうこともある。QX13はその中間に位置し、力強さと制御のバランスが絶妙で、ジャンルを問わず安定した再生を楽しめる。
実際の使用感として、QX13は接続の安定性が高く、スマートフォンやPCとの相性も良好で、ストリーミングからハイレゾ音源まで幅広く対応できる点が魅力だった。KA17はやや専門的な印象があり、音質調整を楽しむユーザーに向いているが、シンプルに音楽を楽しみたい人にはQX13の方が扱いやすい。hip dac 3はデザイン性が高く、持ち歩きたくなる魅力があるが、音質面での万能さではQX13が一歩先を行くと感じた。
休日にじっくり腰を据えて聴き込んでみると、QX13は小音量でも情報量が落ちにくく、深夜にボリュームを絞っても音楽の骨格が崩れないのが分かる。逆にKA17はボリュームを上げた時の見通しが良く、「細部をチェックするモニター用途」にも振りやすいキャラクター。hip dac 3はXBassを入れたときのノリの良さがクセになり、「今日はちょっと元気よく聴きたい」という日に手が伸びがちな一台という印象だ。
長時間聴いてみると、QX13は耳への負担が少なく、自然な音の流れが続くため、集中して音楽に浸れる。KA17は細部の分析に向いているが、聴き疲れしやすい傾向がある。hip dac 3は温かみが心地よいが、ジャンルによっては解像度不足を感じることがある。QX13はその両者の良さを取り込みつつ、バランスを保っているため、幅広いユーザーにとって魅力的な選択肢になるだろう。
総じてQX13は、解像度と自然さを兼ね備え、音楽を純粋に楽しむためのパートナーとして非常に優れていると感じた。KA17は分析的なリスニングに適し、hip dac 3は温かみを求める人に向いているが、QX13はその中間に位置し、幅広いジャンルで安定した再現力を発揮する。実際に聴き比べるとその差は明確で、体感できる違いがあるため、音楽をより深く楽しみたい人にはQX13が強く印象に残るだろう。
まとめ
QX13は一聴して余裕があり、低域の沈み込みから中高域の見通しまで一枚ベールを剥いだようにクリア。デスクトップ級の駆動感を小さな筐体で実感でき、長時間の試聴でも音の表情が崩れない。私の環境では繊細さと力感のバランスが最良で、総合点は4.8/5。KA17はコンパクトさが武器で、俊敏な立ち上がりとフラット寄りの品の良さが心地いい。高解像だが刺さらず、移動時に音場を崩さず楽しめる万能型で、総合点は4.5/5。hip dac 3は音色に艶があり、厚みのある中低域が曲の芯を太く描く。穏やかな温度感でライブ音源が楽しく、XBassの使いどころで表情が変わるのも魅力だが、ニュートラルさでは他の2機に一歩譲る場面もあり、総合点は4.2/5。
総評として、静寂感とダイナミクスの両立でQX13が最上。次点は機動力と取り回しのKA17、色気あるサウンドを携帯したいならhip dac 3。ベストチョイスはQX13。音の芯を太く保ちつつ微細なニュアンスまで拾い上げ、聴く楽しさがいちばん濃い。普段使いのスマホ再生を、もう一段“ちゃんと聴く時間”に引き上げたい人に、安心して勧められる一台だと感じている。
引用
https://www.fiio.com/qx13
https://www.fiio.com/ka17
https://ifi-audio.com/products/hip-dac-3/
{ “@context”: “https://schema.org”, “@graph”: [ { “@type”: “Product”, “@id”: “#product-qx13”, “name”: “FiiO QX13 FIO-QX13-B”, “brand”: { “@type”: “Brand”, “name”: “FiiO” }, “model”: “QX13”, “sku”: “FIO-QX13-B”, “category”: “Portable DAC/headphone amplifier” }, { “@type”: “Review”, “@id”: “#review-qx13”, “name”: “FiiO QX13 FIO-QX13-B レビュー”, “author”: { “@type”: “Person”, “name”: “survival” }, “itemReviewed”: { “@id”: “#product-qx13” }, “datePublished”: “2025-11-29”, “reviewBody”: “QX13は一聴して余裕があり、低域の沈み込みから中高域の見通しまで一枚ベールを剥いだようにクリア。デスクトップ級の駆動感を小さな筐体で実感でき、長時間聴いても音の表情が崩れない。私の環境では繊細さと力感のバランスが最良で、点数は4.8/5。KA17はコンパクトさが武器で、俊敏な立ち上がりとフラット寄りの品の良さが心地いい。高解像だが刺さらず、移動時に音場を崩さず楽しめる万能型。小型ゆえの限界は時に顔を覗かせるが、実用面の満足度は高く4.5/5。hip dac 3は音色に艶があり、厚みのある中低域が曲の芯を太く描く。穏やかな温度感でライブ音源が楽しく、XBassの使いどころで表情が変わるのも魅力。ただしニュートラルさでは他の2機に一歩譲る場面もあり、4.2/5。総評は、静寂感とダイナミクスの両立でQX13が最上。次点は機動力と取り回しのKA17。色気あるサウンドを携帯したいならhip dac 3。ベストチョイスはQX13。音の芯を太く保ちつつ微細なニュアンスまで拾い上げ、聴く楽しさがいちばん濃い。”, “reviewRating”: { “@type”: “Rating”, “ratingValue”: “4.8”, “bestRating”: “5”, “worstRating”: “1” } } ] }
※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます
